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ガチ登山温泉vol.3 @阿曽原温泉と下の廊下

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第3章 新越沢⇒黒部別山谷

このあたりから徐々に登山道が断崖絶壁の様相を呈してくる。川岸を歩いていた今までの道と違い、川がどんどん眼下に下がっていくのだ。危険な箇所には、左手にある岩壁にロープがくくりつけられており、これにしがみつきながら前へ進むことになるのだが、岩壁に刺さっているロープを結ぶ金具が抜けないのか心配してしまう。ロープをつかんだ瞬間にロープと金具ごと取れて谷底に転落なんて笑えない。

しかし、このロープや金具の点検、そして下の廊下全域の道の整備は、毎年関西電力が3000万円くらいのお金を掛けて行っているのだという。今回訪れた際も、何人かの方が道の整備をしてくださっていたが、こんな山奥の道を整備するのは大変だろう。黒部ダムを建設したときに、「建設してもいいが、その代わり責任を持って下の廊下を維持しなさい」と言われたかららしいが、こうやって毎年整備していただいているからこそ、皆が歩ける訳だ。

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

それにしても段々と本当に笑ってられないくらいの高度になっていく。初めは落ちても脱臼くらいの怪我ですみそうなくらいの落差であったが、今では落ちれば確実に重体になりそうな高度である。ロープもあるし、危険な箇所は木などで橋が掛けられているので、足を踏み外したりロープから手を離したりしない限りは大丈夫なのだが、一瞬のミスで死ねてしまう環境というのは普通に暮らしてたらありえない。我々は下の廊下の恐ろしさを徐々に理解し始めていた。

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

川との高度は、15m以上はあるだろうか。4階建てのビルの屋上の淵をロープだけが頼りで歩いているようなものである。毎年このルート上で5人くらいの死者が出るというが、年間1800人がこの下の廊下を訪れることを考えるとかなりの死亡率である。350人に一人くらい死ぬ計算なのか。その一人にならない保障は何も無い。慎重に進もう。

黒部ダムを出発してこの時点で3時間余り。阿曽原温泉までの5時間は、全てこの断崖絶壁と思うと非常に萎える。ただ景色は美しく、黒部川の渓流が日に照らされてキラキラと輝いているのは本当に綺麗だ。雨の日とか、まだ雪渓が残っている時期に訪れるともっと過酷な旅路になるのだろう。しかし、この綺麗な風景を写真に撮るのも一苦労だ。左手はロープをつかまないといけないし、放したら死である。できれば右手もロープをつかんでおきたい。でも写真も撮りたい。ここに掲載してある写真は、左手で落下を防止しながら、右手で必死にシャッターを押して撮った写真である。

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

断崖絶壁を歩き始めて1時間、我々は昼飯休憩を取ることにした。黒部ダムからももう3時間以上歩いているし、時刻もまもなく12時だ。断崖絶壁コースの途中にある岩が平らになっている少し広くなったスペースでご飯を食べる。もちろん、そのすぐ横には川が流れており、そこに落ちれば即死である。

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

我々が、絶景の渓谷美を見ながら、コンビニで買った弁当を食べていると、登山道から一人の中高年の女性が近づいてきた。女性は我々に駆け寄り、顔をしかめてこう言い放った。

「あんたら、山なめてて死んでもしらんからね!!!」

前触れもなく、突然苦言を呈された我々は戸惑った。たしかにジャージ姿・肩掛けかばんでコンビニ弁当を岩の上で食べている大学生、という光景はベテラン登山家からすると信じられなかったのだろう。まわりの登山者は皆重装備で、他に一人も我々のような格好の人間はいない。しかも、この先に待ち構えるのは恐怖の白竜峡である。女性が激怒するのも無理はない。格好だけみれば、自殺志願者にすら見えたのだろう。苦言を呈されて当然といえば当然である。

しかし、我々は格好こそ舐めきっているものの、これまで数々の山に挑戦してきている。北アルプス白馬鑓へ旅したこともあるし、八ヶ岳山麓の本沢温泉を目指して登山したこともあり、山の怖さ・山の面白さは理解しているつもりである。見た目は不安だろうが、自分の力を信じて慎重に進めば何も恐れることはないはずである。

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

阿曽原温泉と下の廊下 新越沢⇒黒部別山谷

弁当を食べ終わって先へ進む。待ち構えているのはあの白竜峡だ。

新越沢⇒黒部別山谷の地図

第4章 白竜峡

黒部別山谷手前で、登山道が崩落し、迂回ルートが出来ていた。川岸ギリギリの道が崩落しているので、迂回路は、断崖絶壁の岩をはしごで登り、さらに岩伝いに平行に移動し、そこからまた10m弱はしごを降りるというルートになっている。正直、ここがこの旅の中で一番怖かった。ゆれる梯子。断崖絶壁の下をみれば、我々を飲み込まんと黒部川が待ち構える。そこを、さらに垂直な梯子で崖を登るのである。

梯子の1段も非常に大きく、しかもほぼ垂直に立つ梯子なので、踏み外せばそのまま黒部川にドボン、お亡くなりである。慎重に登り、慎重に下った。しかし慎重になればなるほど、手に汗をかいて梯子が掴めなくなる。これは非常に困った。また梯子で登って別の梯子で降りるまでの水平部分はバランスを崩せばこれまた谷に滑落しそうな構造だったので、このたった数十メートルの迂回路が一番怖かったし、とても時間がかかった。これは本当にきつかった。

実はこの迂回路には後日談があり、もとの道は崩落しておらず迂回路なんて使わなくてもいけたんだよ、という話を後で聞いて非常にがっかりしたのだった。俺のあの恐怖と努力は何だったんだろう。この迂回路は皆慎重になるので、迂回路前後が非常に渋滞していた。迂回路通らなくていいなら、そう書いて欲しいものだ。

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

この迂回路を過ぎてすぐあたりに、黒部別山谷という場所に出る。ここで昼休みを取っている団体も多かった。ここは川が合流し、少し広くなっている場所で、今までの断崖絶壁から一旦川岸まで降りれるので、ほっとする。沢の水も冷たく心地いいし、天気もすばらしい。ここでお弁当などを食べれば、今までの疲れもふっとぶし、これから待ち構える白竜峡に向けてエネルギーの補充もできるのだろう。

黒部別山谷から登山道に戻るルートは、綱を掴んで斜面をがりがり登らなくてはならない。しかし、綱がちゃんと固定されてないので綱が大きく横に振れ、登っている人間の体も大きく左右に振られてしまう。その中をがんばって一段一段登らなくてはならないのだが、綱が大きく左右に振られる旅に、下のほうでお弁当を食べている人から歓声があがる。「ゆっくり登れよー。」「お--あぶない。」応援されているのか、されてないのかよくわからないがいろんな人の見世物になっていることだけは確かなようだ。恥ずかしいので先へ進む。

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

ここから先が、いわゆる白竜峡というところで、川幅が狭く岩が川にせり出していることから、なかなか迫力のあるいかつい景色となっている。下の廊下の紹介では、この白竜峡を写真に取り上げているサイトも多いようだ。一番道がけわしく、そしてかつ景色が美しいことが理由なのだろう。特に紅葉シーズンの白竜峡の景色は、もう言葉に表せられないくらい美しいという。そんな白竜峡に我々は挑む。

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

すでに断崖絶壁を1時間くらい歩き、感覚が麻痺しているせいだろうか。確かに綱を放せば即死で、道幅も肩幅より狭くどうみても道には見えないところを歩かされるのだが、今までの登山道と違う特別の恐怖は感じなかった。今までの過酷な登山道をすこしだけ狭めた程度である。しかし、場所によっては本当に道幅が無く、申し訳程度に板が渡されていたり、抜けそうなロープを掴みながら、腕力を頼りに先に進むような場面もあるので、本当に気が抜けない。正直なところこれは道では無い。単に垂直に立った断崖絶壁の、たまたま歩きやすくて水平になってそうな部分にロープを張って、はいこれが道なのでここ通ってください!と言っているように感じる。それほど道幅は狭い。

このあたりに貼ってある写真をみてもらったら分かるのだが、「これ道?冗談やろ?どこを歩けばいいの?」という場所が本当に多い。しかも、この命綱が抜けそうで怖いのだ。もちろん毎年、関西電力の方が多額のお金をかけて修復してくださっているし、道の整備もされているということなので、そのようなことが起こるわけがないのだが、へろへろの命綱だけ通されて、「はい、これで大丈夫だから!」というのは心もとない。

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

それにしてもよくこんな道を作ったものだ。ダム計画とかがある前は、本当に歩く場所もない、断崖絶壁だったのだろう。その垂直に聳え立つ岩壁を少しだけ切り取って、そしてそこを登山道としたわけだ。信じられないことだ。やはり、今回は通常の登山とはいろいろ違う。登山と言うよりはアドベンチャーと言ったほうがいいのかもしれない。高低差のある斜面や技術的に困難な場所はどこにもないのだが、取り合えず気が抜けない。いつになったらこの緊張から開放されるのだろうか。進んでも進んでも崖である。

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

阿曽原温泉と下の廊下 白竜峡

しばらく進むと断崖絶壁のコースも終わり、わりと整備され歩きやすくなった登山道になる。もちろん、踏み外せば川に一直線なのは変わらないしむしろ川との高低差は増加したのだが、それでも、綱渡りをしないだけほっとする道である。ここをあと30分くらい歩けば十字峡だという。十字峡までがんばって歩こう。十字峡で休憩だ。

白竜峡の地図

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